画像出典:がん患者の日常
僕が実際に受けているアービタックス(セツキシマブ)による抗がん剤治療について、体験を交えてご紹介します。
手術後の抗がん剤治療を続けていた中で肺への転移が見つかり、再発が判明しました。その際に治療方針が見直され、分子標的薬「アービタックス」による治療がスタートしました。この記事ではその背景と、アービタックスの仕組み、治療の流れなどをまとめています。
再発が見つかって…
直腸がんの手術から約1か月後から始めた抗がん剤治療。約8か月間、定期的に続けてきましたが、その後の検査で右肺への転移が確認されました。つまり、治療を続けていたにもかかわらず、がんが再発してしまったのです。
正直、大きなショックを受けました。「あの治療の時間と痛みは何だったのか」と思わずにはいられませんでした。主治医に「あとどのくらい生きられるのでしょうか」と尋ねたところ、「全体的な平均ではおおよそ3年くらい。ただし人によって全く異なります」との返答。数字を聞くことで現実味が増し、不安にもなりました。
それでも、「1日でも長く生きたい」という気持ちは変わりません。できることはすべてやって、悔いのないように生きよう。そう決めて、妻と一緒にこれからの過ごし方を考えていくことにしました。
新たな治療法「アービタックス」とは?
再発後に提案されたのが、分子標的薬「アービタックス」による治療です。
分子標的薬とは?
通常の抗がん剤は、がん細胞だけでなく、正常な細胞にも影響を与えるため、副作用が強く出やすいという特徴があります。一方で、分子標的薬はがん細胞の特定の性質や構造をターゲットにして攻撃する薬で、正常な細胞への影響を最小限に抑えることが期待されています。
アービタックスの仕組み
アービタックスは、がん細胞の表面に存在する「EGFR(上皮成長因子受容体)」というタンパク質をブロックすることで、がん細胞の増殖を抑えます。
EGFRとは?
EGFRは、細胞の成長を促すスイッチのようなものです。がん細胞にはこのEGFRが過剰に存在しており、細胞分裂の信号を出し続けてしまいます。アービタックスはこのEGFRに結合することで、がん細胞の増殖信号を遮断します。
遺伝子検査「RAS」の確認が必要
ただし、アービタックスの効果はRAS(ラス)遺伝子の状態によって異なります。RAS遺伝子には「野生型」と「変異型」があり、野生型のがん細胞に対してのみアービタックスは有効です。
このため、治療の前にはがん細胞の遺伝子検査を行う必要があります。多くの場合、過去の手術や検査時に採取した組織を使って検査が可能ですので、改めて体に負担をかけるような手術は必要ありません。
アービタックスの投与方法
治療は点滴による静脈投与で行います。
初回はアレルギー反応のリスクもあるため、入院による経過観察と抗ヒスタミン薬の併用が必要です。
点滴時間は1〜2時間程度ですが、体調によってはよりゆっくり行うこともあります。単独での投与だけでなく、他の抗がん剤との併用もあります。治療方針は担当医の判断に基づいて進められます。
僕の場合の治療ペース
僕の場合、以下のようなスケジュールで治療が行われています:
- 病院での点滴治療:約5時間
- 自宅でのCVポートによる点滴:46時間
- このサイクルを2週間ごとに繰り返す
治療は「いつまで?」という問いには、「効かなくなるまで」というのが現実的な答えです。ですが、効いている限りは、このサイクルでがんの進行を食い止めることが目標です。
おわりに
再発が分かったときは、本当に気持ちが沈みました。でも、治療の選択肢があるということは、まだ道が続いているということです。
アービタックスのような新しい治療薬が登場し、がんと共に生きる選択肢も広がっています。この記事が、同じような境遇の方やそのご家族の参考になれば幸いです。
副作用についての体験は、次回の記事で詳しくお話ししますね。