画像出典:がん患者の日常
僕が受けた直腸がんの手術は、「ダ・ヴィンチ(da Vinci)」という手術支援ロボットによるロボット支援手術でした。手術と聞くと「メスで大きく切るもの」というイメージを持たれる方も多いと思いますが、ロボット支援手術は体への負担が非常に少なく、近年ではがん手術においても多く導入されています。

この記事では、実際に僕が体験したロボット支援手術の特徴や、腹腔鏡手術との違いについてまとめてみました。

ダ・ヴィンチとは

ダ・ヴィンチは、アメリカのインテュイティブサージカル社が開発した手術支援ロボットシステムです。従来の腹腔鏡手術の進化版ともいえる存在で、術者は直接患者の体に触れるのではなく、専用の操作台(コンソール)に座ってロボットアームを遠隔操作して手術を行います。

このロボットには以下のような特徴があります:
  • 4本のアーム(1本はカメラ、3本は鉗子)を用いて精密な操作が可能
  • 人間の手以上に滑らかで細かい動きができる
  • 手の震えをロボット側で補正
  • 高精度な3D視野によって、奥行き感覚をもって手術できる
実際に手術中は、術者が動かした手の動きをリアルタイムでロボットが再現してくれます。緻密な操作が求められる直腸がんなどのがん手術においては、非常に心強い技術です。

最新機種「ダ・ヴィンチSP」とは?

2023年1月、日本で薬事承認された**最新モデル「ダ・ヴィンチSP」**では、4本あったアームが1本にまとめられ、切開創が1か所で済むという進化を遂げています。これにより体への負担はさらに軽減され、術後の回復も早くなるとされています。

現在、国立がんセンター都立駒込病院など、都内の一部医療機関で導入が進んでいます。ただし、臓器の構造や病期、患者の体型によっては、従来の「ダ・ヴィンチXi」などが適している場合もあります。

腹腔鏡手術との違いは?

腹腔鏡手術では、使用する鉗子(かんし)に関節がないため動きが直線的に限定され、狭い部分での操作に制限がありました。

一方、ダ・ヴィンチの鉗子には複数の関節が内蔵されており、人の手に近い自然な動きが可能です。先端には用途に応じたさまざまな器具が取り付けられ、多彩な操作が行えるのも大きな強みです。

さらに、術者が操作するコンソールでは左右の目でそれぞれ映像を得られるため、立体的な3D視野で手術を行うことができます。この立体視により、器官同士の距離感をより正確に捉えながら手術できる点も、ロボット支援手術ならではの利点です。

手術の実際:出血量・切開・退院日数など

大腸がんにおけるロボット支援手術では、以下のようなデータが報告されています:
  • 切開創の大きさ:腹腔鏡手術と同程度(SP機種ではより小さい)
  • 出血量:40〜50cc前後(腹腔鏡手術とほぼ同じ)
  • 手術時間:病院によって差はあるが、通常は腹腔鏡と同程度
  • 退院日数:ロボット支援手術の方がやや早い傾向
体への負担が少ないという点では腹腔鏡手術と似ていますが、操作の精密さや視野の広さという点ではロボット支援手術に軍配が上がる印象です。

まとめ

ロボット支援手術は、これまでの手術に比べて精度が高く、体へのダメージが少ないのが特徴です。僕自身もこの方法で手術を受け、術後の回復がとてもスムーズだったと実感しています。

もちろん、すべての患者にロボット支援手術が適用されるわけではなく、病状や体格によって適応が判断されますが、選択肢のひとつとして知っておくことで、今後の治療の参考になるのではないでしょうか。